自転車世界一周の旅日記(その9)幻のパイネ国立公園

自転車世界一周の旅日記(その9)幻のパイネ国立公園

パタゴニアの荒野を南北に貫くRUTA40。強風と悪路のため、歩くのとほとんど変わらない速度でしばらく頑張ったけど3日目でギブアップ。アルゼンチン人の家族旅行の車が来たのでカラファテまで乗せてもらった。

ツーリストタウンのカラファテは楽園みたいに見えた。観光客向けのツーリストインフォメーション、ゲストハウス、ピザやハンバーガーなどの安いカフェ。そしてもちろん両替所もある。世界中からきたバックパッカーが突然見えるようになった。彼らはどこからどうやってここまで来てるのだろう?何はともあれ、無事に両替を済ませてほっとする。RUTA40をさらに南下して再びチリに入国。南米最南端の地に行くには、チリに入ったりアルゼンチンに戻ったりを繰り返す。国境線がそのようになっている。そして小さな港町、プエルトナタレスに到着。とにかく寒い。民宿のような安宿を探す。町にたどり着けない日はキャンプするしかなかったので、暖かい宿に泊まれる日はそれだけで嬉しかった。特に何もない町だが、ついつい3泊もしてしまった。

プエルトナタレスには何もないが、ここは世界遺産パイネ国立公園へのベースとなる町だ。ここから約80km、自転車でちょうど1日の距離に大迫力の氷河地形が広がっているらしい。でも、僕はこの町に3泊もしながらパイネには行かなかった。宿のママさんには「あんた、何しにこんなとこまで来たんだ?みんなパイネを見に来るんよ」と言われたが、そのときの僕は「美しくて壮大な大自然」はあまり興味がないものになってしまっていた。この寒い中、苦労して片道80kmも自転車で行くのはしんどい、ここでゆっくり休んでいるほうがいい。なんといってもここは温かい。アットホームなスタッフと一緒にリビングで1日中一緒に過ごしていた。暖房の効いた部屋で昼からワインをチビリチビリ飲みながら手持ちの文庫本を読んでいるのがたまらなく幸せな時間だった。後から考えたら、別に自転車で行かなくても日帰りのバスツアーもあったはずだが、とにかく疲れてしまってたんだと思う。

カラファテでペリトモレノ氷河は見た。地響きを立ててゆっくり崩れ落ちる巨大な氷の壁は、それはそれで感動した。でも、僕にとってのパタゴニアはやっぱり風が吹き荒れる荒野がすべてだった。途中から車に乗せてもらったとはいえ、心がギブアップするまで走った、あのRUTA40でお腹がいっぱいになってしまっていた。

毎日、冬の日本海のような空だった。太陽はほとんど見えず、曇り空で冷たい風が吹いていた。テンションが上がらなかったのは天気のためでもあると思う。最南端の町、ウシュアイアまであと1週間の距離。あと少し。