初めての海外ツーリング日記~オーストラリア(その2)

泥沼の地平線

道以外は何も見えなくなった。地平線まで続くダートロード。これだ!これを求めて来たんだ!昔読んだ旅行記に「100kmや200kmのダートロードで驚いてはいけない。1000kmを越える、気が狂うほどのダートロードをまだ知らなかった」というフレーズがあったのを思い出した。ただ、天気は悪く、いつ雨が降ってもおかしくない状態が続く。なんとなく不安な空模様。

道は鉄道に並行していた。しかし、すでにそれは廃墟となっていて、ときどき駅の廃墟や捨てられた車両があった。そんな廃墟でも、何もない荒野で見つけると、近寄って写真を撮りたくなる。かつての開拓の足跡。

ときどき、100kmか200kmに1回くらい、廃墟ではなく、生きている小さな町があった。地図には「町」として載っていても、実際はガソリンスタンド1軒だけ、ということも珍しくなかった。ガソリンスタンドは「ロードハウス」と呼ばれ、ガソリンスタンド、ホテル、売店、BAR、カフェを兼ねていて、まさに砂漠のオアシス。

William Creekのロードハウス。こんな砂漠の中の1軒屋に入ると、めちゃくちゃキレイなお姉さんが1人で店番してたりして、心のオアシスにもなりました。とにかく、人と会うだけで嬉しかった。早くも心のホームシック。まだまだ旅慣れていなかった。

そんなオアシスがあるのだから、まともなロードハウスに泊まればよいものを、毎日こんなキャンプ。360度地平線の中でもキャンプに憧れてたというのもあるが、当時はお金も全然なかったので・・・。ある夜、こんな感じでキャンプしてて雷雨に襲われた。遠くに聞こえてた雷鳴はだんだん近くなり、やがて雷は本当に近くなった。こんな何もない場所でテント立ててたら雷に当たるに決まってる。テントをたたみ、バイクも倒し、雨の中、地面に伏せて地平線の中にビシビシ落ちる稲光を見ていた。すごい風景だった。地平線の周りを、まるでネオンサインが駆け抜けるように、稲光が360度かけめぐる。「地球ってすげー!」と、怖い気持ちよりも先に感動した。

夜が明けて助かったと思ったら、大変なのはこれからだった。雨を含んだ粘土質の土はタイヤに絡みつき、全然まっすぐ走れない。それでも進うちはまだ良かった。やがてタイヤに付着した泥はフェンダーとの間に完全に詰まってタイヤがロックして転倒する。そのたびに、手で泥を引っ掻きだす。

荷物満載で転倒すると重くて引き起こせないので、一度荷物を下ろし、泥を引っ掻きだし、少し走るとまた泥が詰まってタイヤがロックする・・・

地平線が見えるような風景の中で、100m進のに1時間くらいかかる。自分はいったい何をしているのだろう?体力だけが減っていく。もう無理。道路が固く固まるのを待つしかない。(はじめからそうするべきだった)

やっと走れるようになったと思ったら、今度は川が出現した。ときどき、クリークと呼ばれる窪地があり、雨が降ったときだけ川になる。もちろん橋はない。はじめのうちは「じゃっぱーん」と叫びながら楽しんでたが、だんだん深くなり、水の流れも速くなり、笑ってはいられない状態に。

とうとう、本当の大河が出現した。バイクがなくても無理!周辺をウロウロ探して、渡れそうな場所を探す。鉄橋があったのでラッキー!と登ってみたら、こんな状態でとても無理。

解決策は、やっぱり待つしかなかった。普通、こんなとこにテント張るときは強盗などに見つからないように、道路から離れた場所に張るもんですが、このときは逆に人に見つけてもらいたかったので、道路脇に堂々とテントを立てた。2日間、1台も車は通らなかった。

でもこの日の夜の星空は忘れない。夜中、トイレで目が覚めてテントの外に出た。目の前に光の柱が地平線にズドンと突き刺さっていた。その光は天空を横断し、反対側の地平線にまたズドン!と突き刺さっていた。銀河だった。

天の川はもちろん日本でも何度も見ていた。でも、こんなに地平線に「突き刺さっているような」巨大な光の柱は見たことなかった。雨の後で砂塵が空気中に舞うことがなく、空気が澄んでいたためかと思う。その後、世界各地の砂漠やモンゴルの草原などで星空を眺めたけど、このとき以上の星空はその後、見ていない。まるで宇宙にいるみたいな気分だった。

(つづく)

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