自転車世界一周の旅日記(その30)インド入国の巻

自転車世界一周の旅日記(その30)インド入国の巻

インドに入った。何はともあれ、ビールが飲みたい。イラン、パキスタンと2カ月の間、飲めなかった。ホテルにチェックインし、まずはビールを買いに行く。瓶にはキングフィッシャーと書かれていた。カッコイイ銘柄。1本、買ってきてベッドの上で飲んだ。効くー!一気に回ってクラクラきた。たった1本で打ちのめされ、そのまま昼寝。ざざーッと波が打ち寄せて引いていく感じがよくわかった。アルコールってすごい。しばらくお酒を断つと、これだけ弱くなるらしい。天井でプルプル回るプロペラ扇風機からの風が気持ち良かった。「きつい旅は終わった。もうゴールは近い。」なんとなく、そんな気持ちになった。

人間の顔が濃くなった気がする。顔の彫りが濃くなったというか。いや、シワが刻まれた顔が増えたのか。いや、それよりなにより、人間の数が増えた。都市部に入ったらそれはすごかった。人間だけじゃなかった。噂には聞いていたが、牛が本当にノッシノッシと町の中を歩いていた。見ていると、人間よりも車よりも、牛が一番エライのではないか?というような態度で堂々と町の中で生きていた。

マクドナルドがあったので食べに行った。肉が独特な味。この国では牛はヒンドゥー教の神様だから食べられない、豚はイスラム教徒が食べられない。だから羊肉のハンバーガーになったそうだ。意外な味でけっこう気に入った。デリーの町は世界中のバックパッカーがいるので、旅行者向けにいろんな料理屋がある。日本食を出すレストランもあった。欧米の都市にある「日本食レストラン」とは違う。インド人のオヤジが作るインド風カツ丼が美味しいと評判だった。おそらく長期滞在していた日本人バックパッカーがレストランでバイトして、日本食レシピを店に残し、それが現地風にアレンジされて「インド風カツ丼」が生まれたと思われる。もちろん肉はトンカツではなく羊の肉。

そんなわけで、インドに入国。禁酒の国から入ったからだろう。僕にとってのインドは「自由の国」「華やかな楽園」「旅行者にとってパラダイス」というのが第一印象だった。