自転車世界一周の旅日記(その26)ルート砂漠横断失敗!?

自転車世界一周の旅日記(その26)ルート砂漠横断失敗!?


古都イスファハーン、ペルセポリス遺跡、バムの都市遺跡。イランは自転車で国土を縦断するルートに沿って世界遺産が点在しているので、意外と観光もできた。南に行くに従い、気温はぐんぐん上がっていく。ほんの1カ月前、トルコ東部では雪が降っていたのに嘘みたいに暑い。そんな暑い荒野の中に、ときどき小さな町がある。木陰で休んでいると、あっと言う間に人が集まってきた。バイクに乗っている少年もよくいて、自転車に並走して声をかけてきた。ほとんどが「ハロー」と「What’s your name?」の2フレーズだけだった気がする。そんな語彙力で1時間くらい平気でニコニコと会話が続くのだから、旅は不思議だ。

バムには砂でできた城塞都市の遺跡が箱庭のように残っていて、欧米のバックパッカー向けの安宿があった。エアコンがガンガンに聞いていて、いい休養になった。バムの都市遺跡はその後、2003年の地震で崩れてほぼ壊滅してしまったそうだが、今は復旧が進んでいるらしい。

バムからザヘダンは330km。その間にはルート砂漠が広がっている。砂漠といっても、ちゃんと舗装された道路がある。2日間で到着する距離。昼は暑くて走れないと思っていたので早朝に出発した。夜明け前は涼しいが、太陽が昇ってくると一気に気温が上がる。朝8時ですでに暑い。10時になるとたぶん40℃を突破している感じ。暑い。まじで暑い。本当に暑い。まるで頭上10cmくらいのあたりにオーブントースターがあるみたいだ。ストーブではない。オーブンで焼かれて焦げてしまいそうな感じ。地面も鉄板のように暑い。この頃は靴ではなく素足+サンダルになっていたが、失敗だった。ペダリングで地面に足が近づく度に焚火に足を突っ込んでるみたいな感じ。ペダルの回転に合わせて「アツイ、アツイ、アツイ、アツイ」と唱えながら進む。そして、とうとうタイヤが破裂した。穴が開く、という程度のものではない。「パーン!」という激しい破裂音に続いて「プシュシュシュシュシュー!」と空気が一瞬で抜けた。こんな状態になるのか。スペアのタイヤとチューブは持っていたが、この暑さの中で修理する気がしない。朦朧としてくる。ザヘダンまでは200km以上残っている。まだ半分も来ていない。迷うことなく、車を拾い、ザヘダンまで乗せてもらうことにした。ルート砂漠横断、あっけなく挫折。相変わらずインチキなアジア横断の旅。

このブログを書くにあたり、改めてルート砂漠を調べたら、なんと砂漠として近年、世界遺産に登録されており、これまでに70.2℃の気温を観測されたこともある世界有数の暑い場所であるらしかった。そこまで暑い場所だったとは。この頃は全然知らなかった。そして、この後パキスタンに入ってからもっと暑くしんどい旅になるということもまだ知らなかった。