自転車世界一周の旅日記(その18)アクロポリスの丘

イタリアからギリシアに夜行フェリーで渡った。アテネではどうしてもアクロポリスの丘に登ってみたかった。観光地巡りはあまり気にしなくなったと言いつつも、いくつか絶対見たいものがあった。そのうちの1つがパルテノン神殿。この旅でバイブルのように持ち歩いていた小田実著『何でも見てやろう』の中で「もっとも西洋らしいもの」として書かれていたのがこれだ。南米で散々見てきた西洋というものの力、スペインで本物だと感じた西洋の衝撃、さらにローマを見てきた自分にとって、ギリシアとはどのように映るのか?

実際にギリシアに来ると、とてつもなく田舎だった。フェリーが到着したパトラやアテネはそれなりに都会だが、田舎の町だけを切り取ってみれば、そこは本当にヨーロッパかと疑うくらいの田舎風景だった。南米のチリやアルゼンチンのほうがずっとインフラや経済力が上のような気がした。古代ギリシアは哲学や数学で世界の最先端を走っていたはずなのに、なぜ今はこんなに弱い国になってしまったのか?ひょっとしてシエスタが悪いんじゃないかと思った。この国にもシエスタがあった。都会では1日がフルで動いているが、田舎ではランチタイムの後はゴーストタウンのように静まり返った。

アテネの町を歩き、ビルとビルの間にアクロポリスの丘が見えたとき、大きな感動があった。長い長い旅をしてきて「ここまで来た」という感覚が芽生えた。アテネは旅のゴールでもなんでもないけど、心の底にじーんと来るものがあった。子供の頃から「いつか見てみたい」と思っていたパルテノン神殿が、まるで映画のように丘の上にそそり立っている。アリストテレスの、ピタゴラスの、アルキメデスの、古代ギリシアの象徴が太陽の光を浴びて輝いている。

あくまで自分の感覚だけど、世界遺産級の遺跡でも「死んだ遺跡」と「生きてる遺跡」があると思っている。パルテノン神殿は今でもギラギラとしたオーラを感じる「生きている遺跡」だった。実はほとんどが復元だとか、本物のレリーフや彫刻は大英博物館にあるとか、過去の栄光とか、そんな言葉はどうでも良かった。ここまで来たぞ。さて、これからどこまで行こうか。メラメラとエネルギーを与えてくれる気がする、圧倒的な存在感があった。

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